「おっ！　来た来た！」
「…………」
「よーし！　ほれ見ろ、コイツも結構大物だぞ！」
「…………」
「入れ食い状態とはこのことだな、これならメシの足しどころか余りを売ったって良さそうだぜ」
「……あんたは楽しそうでいいねぇ」
「ああ、最高だな！　でも俺だけじゃねえ、周りを見てみな」
「………………みんな楽しそうですねぇ」
「逆に全く釣れてねぇお前が不思議だよ。だってほれ、そこにもう泳いでるのが見えるじゃねーか」
「見事に私の餌を無視してね」
「お、俺の方来た！」
「はぁ〜〜〜〜……」
「漁村出身なのにな、っと！」
「村じゃ投げ網漁だったし……あんた、何か細工してない？」
「してねーよ、竿はそこで借りた同じやつ、餌も同じ籠から取ってるだろ」
「納得いかない……」
「まあいいじゃねーか、今日はこの俺が釣り上げた魚たちを心ゆくまで食え！」
「まさかこんなことになるなんて……うっかり声を掛けたのが間違いだったわ」
「ふふーん、貸しを作るのが嫌なら食わなくてもいいんだぜ？」
「食べる、食べるよ！」
「まったく今日は良い日だなぁ！　おっ、また掛かった！」
「…………魚め……」