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賭け事

「ちょっとあんた、また賭場行ってたでしょ」
「……なんで知ってるんだ?」
「査察官から聞いた。それで前の仕事クビになったっていうのに、ほんと懲りないよね」
「いや、あれは賭場だけじゃなくて他にもいろいろ……」
「はあ……」
「まあ、小銭くらいしか賭けてないから大丈夫だって。負けたってたかが知れてるさ」
「私が言いたいのはそこもよ! 毎回毎回ちまちまと……あんたも傭兵の端くれなら有り金全部突っ込むくらいしなさいよ!」
「どういう怒り方だよ」
「命懸けで稼いだ金でさらに勝負にするって言うならそれくらいしなきゃダメでしょ。何をちょっと良い夕飯一回分くらいの勝ち負けで満足してるわけ?」
「ああ、うん。お前は絶対賭場に行かない方がいい奴だな……」
「頼まれたって行かないっての、あんなところ」
「あんなところって、入ったことあるのか?」
「まあね、あんたと組む前だけど」
「で、どうだったんだ? 俺にはでかいこと言っといて自分は少額勝負なんてことはないよな」
「いや、賭けないでただ場内を眺めてただけ」
「……はあ? それこそ何が面白いんだよ」
「いや、結構面白かったよ。この世の終わりみたいな顔して出て行く奴がいっぱいいて」
「な、なんつー歪んだ楽しみ方してんだ……っていうかじゃあお前、もし俺が大負けでもしたら」
「ふふっ……想像するだけで笑える……」
「怖……しばらく賭場行くのやめるか……」

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