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帰りたくない

「お、いいところに来たな! 珍しく良い仕事が入ったぞ」
「え、何? どんな依頼よ」
「ここから東のペレカ村までの往復護衛!」
「ペレカ……って、うわ」
「あの道なら大した賊もいないだろうし、距離がある分報酬は結構良いぜ」
「あー、うん。そうなんだ」
「なんだそのいかにも浮かない顔は」
「いや……その村さ、いるんだよねぇ……」
「いる? 何が」
「……知り合いが。出来れば会いたくないのが」
「え、もしかしてペレカってお前の故郷?」
「いや、実家は隣の村。でもほら、あるでしょ、いろいろ」
「よく分からんな。俺、生粋の都会っ子だし」
「じゃあ、あんたの町に行く依頼があったら喜んで取ってくるわけ?」
「…………」
「…………」
「しかしなぁ、誰がいるのか知らんがこのうまい仕事を逃す手はないだろ。っていうかもう受けてきちまったんだが」
「あーもう……はあ……死ぬほど気乗りしないけど、行くしかないか……」
「その通り! にしても、珍しく弱ってるお前を見るとなんか気分良いな」
「…………次の仕事が楽しみだねぇ〜ベイルくん」
「いや、今回のはマジで知らなかったんだって!」

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