
ファルア王国
大陸南部のミラド半島を占める王国。
大陸歴650年代、帝弟である初代王が皇帝に反旗を翻し始まった『二十年戦争』と呼ばれる戦いによって帝国から分離独立した経緯からファルア王家の血筋はランダイト帝室の傍系にあたり、現在でも侵略ではなく領土奪還という名目で断続的に帝国から攻撃を受けている。
王侯貴族は基本的に世襲制であるものの実力主義的な国風であり、平民出身の重臣が他国と比較すると非常に多いが、その反面、宮廷では生粋の貴族と平民あがりの臣下との間に大きな軋轢がある。
領土は広大とは言えないものの豊富な資源を背景として高い軍事力を持ち、過去には王家直属の《赤光隊》が北方ストリオ人を除けば大陸最強の戦闘部隊とも評されていた。
独立初期から王国と帝国との溝を深めることを狙った西方の伝道師団の働きによって、現在では国民の多くが崇天教《聖典派》信徒になっているが、西方とは違う独特の風習も見られることから、彼らは《王国派》と呼ばれることもある。
王都マルキア
ゆるやかな丘陵地帯に佇むファルア王国の首都。
王国の他の主要都市と同様に東西から流入する様々な物資、人材、文化の坩堝であり、経済力では帝都をしのぐほどの繁栄を果たしている。とくに季節ごとに開かれるマルキア大市は他に類を見ない活況ぶりである。
人口増加にともない膨大な費用を要する外壁の新築を選択した帝都とは違い、外壁の拡張や新築はせず、人々は城壁外に溢れるままに住み着いている。そのため一見すると外周部は防衛力が低く、時折経験の浅い野盗や強盗傭兵団が襲撃を企てるものの、壁外区域でも多くの王国兵、傭兵、自警団が日夜目を光らせているため大抵は何を得る間もなく返り討ちに遭う。
文字通り開かれた都市であることと競争原理に傾いている国風の弊害として繁栄の裏には大きな貧富の差と秘匿された汚れ仕事が横たわっている。


アダラテの丘
王都から見下ろす丘のひとつであり、『二十年戦争』の最後の決戦の舞台となった場所。アダラテは古ミラド語で「かがり火」を指す。
もともとは背の低いイネ科植物に覆われていたが、帝国、反乱勢力の両軍におびただしい死者を出したアダラテの戦い以降、それまで周辺に分布していなかった種の草木が繁殖し始めたため『血吸いの丘』とも呼ばれる。その剣呑なあだ名とは裏腹に、独立を決定付けた祝福の地として王国民には親しまれており、丘の中腹には崇天教会の聖堂が、頂点には勝利の記念碑が建てられている。