リン地方
大陸北西部の高地帯。
アフルール地方に接続する内陸部の大半が通行の困難な山地であり、支配者も代々閉鎖的な方針を採ってきた歴史から人や物の移動が他地域と比較して極端に少なく、西方諸国連合の一員であるにもかかわらず北方ストリオンに次いで世間では謎の多い土地とされている。また、北部にはいわゆる西方部族の北部開拓時代より前に当地に住み着いていた部族が暮らしているが、基本的に中央以南の主要な町村に下りてくることはない。
高い平均標高と寒冷な気候に適応した大型動物が重要な食料、貿易財として利用されている他、輸出に堪えない低品質ではあるものの魔晶石が豊富に採掘されており、それを活用した文化が特色になっている。
領都クレフェドル
リン地方のほぼ全域を領有するクレフェ侯国の都。
首都としてはあらゆる意味で小規模な都市であり、人口もリン地方の玄関口とされる港町ストラより少ないが、他国では領主の城などで見るに止まることの多い魔道灯が民間にもある程度普及しており、その光に照らされる整然とした石造りの街並みは西方随一の美しさを誇る。
開拓時代の拠点を基に築かれた街としての歴史を重んじていることから領城には充実した資料室が併設されている他、街角や酒場では伝承歌がよく歌われている。別の側面として、開拓初期に原住民族による工作で大きな人的被害を受けた『黒水事件』の教訓を今に受け継いでおり、市街への出入りには厳しい検査が伴い、たとえ同じクレフェ人であっても気軽に通過出来ない。
ベーダルの森
領都の北に広がる広大な森林地帯。
クロニスと呼ばれる固有種の鹿が生息しているのが最大の特徴で、狩場として人気がある一方、クロニスをはじめ手懐けるのが困難で狂暴な生物が多数存在し、備えなく足を踏み入れるのは非常に危険。そのため森の南に位置する領都クレフェドルとインの町、北に位置するトーラの町では護衛組織《ベーダル社》が店を構えており、通行のうえで彼らを雇うことは事実上の必須事項になっている。
生物による直接被害だけでなく獲物を深追いするうちに遭難する者も後を絶たず、そうした死者から生まれた強力な死霊や魔獣が徘徊する深部の危険地帯の存在は崇天教会《預言派》が専門の騎士隊を編成しなければならないほどの脅威である。