
ナジン連邦
大陸東部を支配下に置く、無数の部族の共同体。
議会の長《人王》、軍総団長《獣王》、法を司る《心王》の三王が中心となってまとめている。
定期的に連邦議会が開かれる他、いくつかの規則のもとで部族間の衝突と和解を繰り返しており、小競り合いによって毎度少なくない死者を出しているものの、民たちもそれを当然のものとして受け入れる文化を持つ。
全域に共通する信仰は無く、各々が先祖から受け継いできたものを崇めており、それを理由に争うということは非常に稀。少数だが崇天教徒、地神教徒も存在しており、質素な造りながら聖堂や神殿も各地に見られる。
平時は各部族が独立して振る舞うが、「東方人」としての外敵への敵対心は共通のものであり、大戦期には《獣王》の指揮のもと組織立った奇襲戦術で帝国に立ち向かい、領土をほとんど奪われることなく守り切ることに成功した。とくに南方の部族を中心とした《大斧海戦隊》、対帝国戦で常に最前線に立ってきた《血盟の槍》が名高いほか、要人暗殺に長ける《夢幻衆》なる部隊が存在するとされる。
ケル・ダナ
どの部族の領域にも属さない、連邦議会が置かれる区域。
連邦成立以前に帝国によって滅ぼされたティグ族の遺構を転用しており、外見は密林の中に突然現れる石造りの要塞群といった趣きがある。
常駐しているのは《血盟の槍》の戦士のみであり、普段は彼らが研鑽を積む音が響くばかりだが、議会が招集されると各部族から相応しい者たちがさまざまな身分の者たちを伴って続々と訪れるため大盛況となる。ただし議会場などの主要施設に侵入を試みた招かれざる客への対応はきわめて厳しく、時には有無を言わさずその場で処刑することもある。
また、外国人が区域の中へ足を踏み入れた場合も同様の対応を受けるが、唯一の例外として『暗い雨戦争』で当時の《獣王》を三日に及ぶ一騎討ちのすえ破った帝国のベルクト将軍が招かれている。


イーシャ樹海
ケル・ダナを覆い隠す密林地帯。
年間を通して非常に湿潤な環境で、自生する食物資源の採集地としては大陸でも最大の面積、収穫量を誇る。ケル・ダナを含む非占有地帯として三王の管理下にあり、収穫物は《心王》主導による調査のうえ、連邦議会での決定を経て各部族に分配される他、余剰分は主にファルア王国に輸出される。先の大戦中に発生した異常気象により大陸の多くの地域が飢餓の危機に襲われるなか、東方諸部族が戦の手を止めずにいられたのは長雨に耐えうるこの樹海の恵みと、歴史の上で培った制度の賜物である。
内部には困窮者や部族を追放された者たちのための里も古くから存在しており、ここで救済され、のちに《獣王》にまで上り詰めた者もいる。